柳本バイオリン教室 

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■バイオリン関連情報

バイオリン演奏時の体のミスマッピングについて 2022.3.4

今日は、バイオリン演奏時の、腕から手までの骨の動きについて考えてみましょう。 間違った思い込みによって動作がしづらくなることがあります。体に負担をかけず、楽にバイオリンを扱えたら楽しさも倍増しますね。

バイオリンを構えた時、左腕は回外しますが、(手の平が上になる)小指に繋がる腕の尺骨は、肘関節からまったく動きません。 ここを無理に回転させようとすると、肘や手首にに無理がかかります。腕が回るのは、親指側に繋がる橈骨が上腕骨と接した支点を軸に旋回しているからです。 手のひらが上向きのときは、橈骨と尺骨は平行になり、手のひらが下向きのときは、橈骨が尺骨の上に交差します。 小指側の尺骨は、腕の回転の際、軸になるだけですから、無理に回転させずに小指との一体感を感じて弾くと、小指に安定感が出て弾きやすくなります。

次は手についてです。弦を指で押さえるときに必要な動きは、ほとんど指の付け根を動かす中手指節関節から生じます。では中手指節関節とはどこでしょうか。 手のひら側から見ると、指と手のひらの境目と考えがちですが、実は手のひらの2〜2.5センチ下がった所なのです。 指を揃えて90度に曲げて見るとそれがよくわかります。そこから指が動かせると思っただけでだいぶ楽に動かせるようになりませんか。 更には指の骨は手のひらの中へと繋がっており、始まりは手根中手関節(手首のしわから手のひらの下までのあたり)からなのだと認識しなおせば、尚更自由度が増すのではないかと思います。

バイオリン演奏時の体の使い方のみならず、練習の仕方などもすべて脳からの正しい指令によってうまく運びやすくなり、 驚くほど弾きやすくなることがあります。是非試してみてください。

参考文献
バイオリニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと ジェニファー・ジョンソン著


季節によるバイオリンの状態の変化。自分でできるメンテナンス 2021.11.16

気温が下がり、空気が乾燥してきました。バイオリンの弾き心地に変化を感じる方も多いと思います。 バイオリンの調整は、熟練の職人さんでなければできない高度な技術ですが、 バイオリンの状態を良好に保つために自分で出来る事もありますので、今日はそれについてお話します。

バイオリンに最適な湿度は、45〜50%位だと思います。市販の湿度計はかなり誤差がありますので、 私は市販の湿度計を2つ音楽室に取り付け、 またエアコン付随の湿度確認機能も加え、合計3つを使い調整をしています。夏はエアコンの除湿機能と 別の除湿器を併用して、60%を超えないように気をつけています。これからの季節は加湿をして、40パーセントを 切らないようにしたいと思っています。

また、バイオリンの指板から弦までの弦高を測ることでも、楽器にとっての最適な湿度を推測することが出来ます(きちんと調整できている場合)。 湿度が高いと指板が下がり、弦高が高くなります。また湿度が下がると弦高が低くなります。 最適な弦高は、フルサイズのバイオリンですと、E線が3.5mm~4mm弱、G線が5.5mmです。 高すぎると弦を押さえるのが大変になったりハイポジションで隣の弦を一緒に弾いてしまったりします。 低すぎると弦が指板に当たって雑音がしたり左手のピチカートが出しづらくなったりします。

部屋の湿度調整は、環境により難しい場合もありますが、少しでも理想の数値に近づけることができれば、バイオリンは良く鳴ってくれて 気持ちがいいものです。 同じ部屋にあるピアノならば、音程の狂いも少なくなります。完璧は難しいですが、出来る範囲で湿度を意識してみましょう。

参考文献
最上の音を引き出す弦楽器マイスターのメンテナンス   園田信博 誠文堂新光社


バイオリンの理想的な構え方 2021.7.24

前回、韓国系ドイツ人バイオリニストのジュミ・カンさんの事を書きました。

特に、肩当て無しの時の演奏にとても魅力を感じたことをお伝えしましたが、今回は、バイオリンの理想的な構え方を考えてみたいと思います。

バイオリン演奏時には、どれだけ体に自由を与えることができるかが鍵となります。体のどこかが緊張していると、腕や手の動きを妨げるからです。よく顎と肩で支えれば、 左手がフリーになって弾きやすいという考えもありますが(音楽之友社の新しいバイオリン教本にもそのような構え方の説明があります)、 そうすると肩回りや背中、胸などが緊張してしまいます。

では、バイオリンを主に左手でささえるとどうでしょう。 (反対側は鎖骨または肩に乗っている状態で、安定のために顎が軽く乗っています)

左腕の筋肉は使いますが、それ以外の場所は、楽に動かせるようになります。体の右も左も、まるで体操をしている時のように自由に動かせるので、手先まで楽になります。

また、これができると、ほとんど肩当てが必要なくなります。だた、左手で持ちつつ、シフトやビブラートをするのには、少しコツがいります。 それを研究するのが面白いところです。

生徒さんのレッスンでは、腕の筋力や体形、また初心者であるなどの理由により、肩当てを使うことが多いですが、 どのような方でも、この理想的な構え方は応用がききますので、試していただければバイオリンとの一体感を楽しんでいただけるようになると思います。

いくつか参考文献を上げておきます。

  1. 『バイオリン奏法』 レオポルド・アウアー著 シンフォニア発行

    多くの有名バイオリニストを育てたアウアーは、この本の中ではっきりと、バイオリンは左手で持ち上げる、と言及しています。

  2. 『バイオリン奏法』 ユーディー・メニューイン著 音楽之友社発行

    バイオリンを、左手と鎖骨でバランス良く支える方法が非常に詳しく解説されています。 また体全体の動きの関連性にも着目しています。

  3. 『バイオリンを語る』 ユーディー・メニューイン ウイリアム・プリムローズ著 シンフォニア発行

    2番と重複する箇所もありますが、後半はビオラについて書かれています。 ビオラはバイオリンと似ているが全く違う楽器だということが書かれています。

  4. 『篠崎史紀のバイオリン上達練習法 パンドラの箱』 篠崎史紀 アジア・インターネットサービス発行

    NHK交響楽団のコンサートマスターがお書きになったものです。1.2.3.と同じくバイオリンは左手と鎖骨で バランスよく支えるそうです。 ビデオ付きです。練習の仕方の詳しいアドバイスもあります。

  5. 『バイオリン奏法と指導の原理』 イヴァン・ガラミアン著 音楽之友社発行

    これまたバイオリン奏者の間ではバイブルのような本ですが、講師側が生徒さんを教えるときに気を付けるべき事も書かれています。 正解は人それぞれであり、一つの方法を押し付けるべきではない、ということが書かれています。

    また、技術的な事柄と、体を動かす司令塔である頭脳との関係も書かれています。

    私の大学1,2年次のときの恩師、中島先生と萩原先生、山岡先生が本書訳者のメンバーです。

以上、参考文献を上げましたが、他にも勉強になる書籍がありますので、紹介していきたいと思います。


クララ・ジュミ・カン 2021.7.10

好きなバイオリニストは星の数ほどいるのですが、最近特に気になる韓国系ドイツ人バイオリニストの、クララ・ジュミ・カンについて お話しします。

何と言っても音楽的センスが素晴らしいです。イントネーション、リズム感、音色、ビブラートの使い分け、弓使いなど、 高度なテクニックにも脱帽ですが、それを忘れさせる程の音楽性に深く惹きつけられます。

ずっと肩当てを使っていた私が、肩当てなしの奏法も研究しようと思ったのは、クララ・ジュミ・カンさんの演奏を聴いたのがきっかけです。 以前は肩当てを使っていらっしゃいませんでした。それがあのような素晴らしい演奏を際立たせるのではないか、と思ったからです。 (今は肩当てを使ったり使わなかったりされているようですが。)

数年研究した結果、うまくバイオリンを扱うことができれば、肩当てなしのほうが 表現したいことがダイレクトにバイオリンに伝わり、 早く反応してくれるので、弾きやすいという結論です。音もクリアになります。ただし、ポジションの移動やビブラートに少しコツがいります。

また体形や腕力の違いなどにより、肩当てを用いたほうが良い場合もあります。その時も肩当て無しの時のバランスを上手く取り入れることで、 弾きやすくなり、音も断然良くなります。

次回は、バイオリンはどのように構えるのが最適か、考えていきます。